誰かを好きになっただけ、他のひとやものごとが遠ざかるのはよくあること。だがそれも過ぎれば、しばしば恐ろしい事態に至る。
憎い相手を超常の手を借りて消す所から始まる物語は、最愛の人のために、それ以外を手にかける、捨てる選択を取った人たちのお話でもありました。
例外もいますが、どの登場人物たちも鬱屈とした背景を持っており、その屈折していく様や悪意の煮えたぎり具合は実に読み応えたっぷり。人間の暗く重たい部分をたっぷり味わえるという点が、本作がホラー小説であることの何よりの芯だと思います。
選択は、選ぶ前からその選択肢があったということ。であれば、それを取った責任もまた負い続けなければいけない。ある人は悲惨な末路を遂げ、ある人は間違いに気づいた。
人間の業の鮮やかな描き方を、なんと! 小説を書き始めて四ヶ月という短さで書き切った作者様の教養と才能が末恐ろしい……。
今後も新作などが出たら追っていきたいと思います。エキサイティングでぐいぐい引きこまれ、一気読みせずにいられない魅力の作品をありがとうございました!