25キス♡まん丸と変な声
「なのです!?
全身打撲に上腕骨も骨折してるです!
出血の割には頭の傷もひどいのです!」
検査着に着替えたリーリエが寝台に寝かされて生体魔法で検査を受けてる。
触診された場所のあちこちが淡い光を発している。
この光の反応で体の損傷や病気を調べることができるらしいんだよね。
生体魔法は神から授けられた神聖魔法とはまた違うもの。
リーリエの体に触れているのは回復術師のプリプリ。
チビット族の女の子だ。
かわいいチビっとな星型のツノと、まん丸お耳が特徴的な種族。
子ども並みの身長だけどわたしより年上だったりする。
患者のことを思い希望にあふれて意思の強そうな青紫色の瞳は
飾り気のないクリンとしたうぐいす色のボブカットがかわいい。
ロリっ娘なのにプリプリっと出るとこ出てるんだな♪
聖皇教会に勤める神官なのに支給される神官衣じゃなくてチビット族特有の民族衣装を身につけている。
これがまたかわいいんだ♪
「そんなにひどいの?
よくそんなんであんな強力な風魔法を使えたね?」
「風魔法は魔導狙撃銃にも応用するわたしの得意技です。
破壊力と命中率が爆上がりです。
ふへ。
……笑ったら痛いです」
つつーっと頬を濡らす涙。
得意なことに笑うリーリエも涙するリーリエもかわいいけどね?
「当たり前なのですよ!
結構なお怪我なのにここまで歩いてきたのです!?」
「魔導路面車は使ったよ?
リーリエったらそんなに痛いならちゃんと言ってくれればいいのに」
「嫌です」
こんな時でもそっぽを向くの!?
「……だって痛いんでしょ?」
「やっぱり痛くないです」
「そうなの? じゃあこれは?」
ツンツンと骨折してる上腕骨のあたりを突いてみる。
「〜〜〜〜〜!」
涙がポロポロ流れてるし!
「ああ! やっぱり痛いんじゃない!」
「……痛くないもん」
「もんじゃないからね?
プリプリ、治してもらっていい?」
「はいです!
我は祈る神たる御手の恩寵あらんことを。
「うく!? くぅ〜〜〜〜〜!」
「涙がすご〜い。これって痛いんだよね〜。
なでなでしてあげるから我慢してね。
よしよしいい子いいこ♪」
痛がるリーリエの体のあちこちが光の粒であふれてる。
自己治癒力を促進する魔法で、これが治ってる証拠らしい。
神の祈りっぽいことを言ってはいたけど?
「神聖魔法じゃなくて生体魔法じゃない。
プリプリは相変わらず神の奇跡は行使できないんだね?」
「これは神の奇跡なのです!」
「だったらこんなぼろっちい小屋にいないよね?
とうとう寮から追い出されたんだ?」
「自分から出たのです!」
聖王都ルパの西側の中心に位置する神の巨塔の足元。
神々しい神殿を本部にする聖皇教会。
その敷地内の端っこのさらに端っこにある物置小屋。
「プリプリはいつもと変わらず聖皇教会のつまみものちゃんかあ。
回復魔法の使い手としては聖皇教会でもトップクラスなのにねえ?」
「別につまみでも肴でもいいのです」
「ふへ」
つつ〜と涙。
痛いなら笑わない方がいいよ?
「聖皇教会も困ったちゃんだねえ」
「困ったちゃんですか?」
「リーリエは知らない?
ちゃんとした神聖魔法を使える神官が戦争終結以来、年々少なくなってるんだよね。
それなのに神聖魔法じゃない生体魔法で活躍してる上に治療費をほとんど受け取らないプリプリは嫌われ者なんだよね」
「こんな痛い魔法では嫌われても仕方ないかと」
「が〜んなのです!
ですが信仰心は誰にも負けないのです!
そういう姫様だって聖皇教会に嫌われてるのです!」
「まあねえ。
嫌だよねえ。王権と宗教的権威の対立はさ。
ほんと派閥争いが酷いんだよねえ」
「だから国王は女神のことを知られると面倒、と言っていたのですね?」
「女神様なのです!?
どういうことなのです!?
プリに教えてくだい! なのです!」
「いや〜。
わたしってば女神様のご加護をもらっちゃったみたいでさ?
何をやっても死なない無敵な体になったんだ?」
「な、な、な、なのです!?
女神様のご加護!
どの女神様なのです!?」
「あれ? そういえば知らないかも?」
「国教の女神様じゃないのです?
どっちにしてもうらやましいのです〜」
「でもこれは秘密にしといてね♪」
「なのです!
確かに教会に知られたら大変なのです。
それこそ神権が脅かされると対立意識が強くなるのです」
プリプリの悲しい顔が悲しい。
「でしょ?
ねえねえプリプリ!
やっぱりわたしのとこにおいでよ!
今回みたいにリーリエや騎士ちゃんたちが怪我をした時にプリプリみたいな腕ききがいてくれたら嬉しいからさ!」
治療中のプリプリに抱きついちゃったり♪
「うきゃ!?」
「ああ!? 生体魔法の行使中に抱きついちゃダメなのです!
自己治癒が乱れるのです!」
「あり? ごっめ〜ん!」
乱れたのはうっかり触っちゃった出てるとこのせいかもしんない。
プリプリの顔が赤いしね。
「痛いです。
……痛くないです」
「どっちかな?
治療が終わった?」
「はいなのです。
自己治癒力を急速に高めましたから二、三日は安静にしてほしいのです」
「そっかあ。それじゃあリーリエは体が治るまで自宅療養してね!
お昼も夜もそれまでお休みでいいからさ」
「嫌です」
「おや? そんなにわたしに会いたいのかな♪」
「暗殺がしたいだけです」
「暗殺ってなんのことです?
それよりも女神様のことをもっと教えてほしいのです!」
「いいけど……
それならわたしのとこにおいでよ!
そしたら手取り足取り教えてあげるから!」
「ハレンチ王女の目が怪しく光ってます」
「む〜。悩むところなのです。
ここに身を置くのもちょっと嫌気がさしてきたところではあるのです。
ちょっと考えてみるのです。
リーリエ様のお家までの魔導車を手配するのです」
「いりません。
昼の約束を実行します」
「「ダメだよ(なのです)!」」
「どうせしばらく動けないのです。
試しに起き上がってみてくださいなのです」
「……
………
起きて……みせます」
「リーリエ、がんばれ〜」
「ダメなのです!」
ゴスン
プルプル震えながら自力で体を起こそうとするリーリエのおでこにプリプリのおでこ頭突きがヒット!
「……痛いです」
「ちゃんと寝てるのです!」
リーリエがおとなしくなりました。
「物理麻酔かな?
それじゃあわたしは魔法省に行ってくるね!
リーリエは安静ね!」
「嫌です」
嫌じゃないでしょ?
動けないんだからさ?
「プリプリ、リーリエのことよろしくお願い!」
「はいなのです!
ところで姫様?
さっきプリのお胸をまさぐったのです?」
キュピーンと光るプリプリの青紫の瞳!
「うひゃあ!?
こら! ちょっ!?
そこは!?」
「倍返しなのです♪」
ひ〜!
攻撃されるのはちょっと待って〜!
小さい体でわたしに飛びついてわたしの敏感なところをあちこちむにむにしてくる!
プリプリはわたしの体を治療したことがあるから隅々を知られてる。
その……弱いところも。
「や、ふわあ!」
変な声がでちゃいそうだから叫んでごまかす!
しっかり5倍くらいに返されました。
プリプリすっごい満足そう。
リーリエは最初はざまみろ感だったけどそっぽ向いちゃってたし。
出発しようとほったて小屋の扉に手をかけたところで思い出した。
「あ」
とことこっと寝てるリーリエに歩み寄ってほっぺにちゅ〜♪
「動けないのに卑怯です」
卑怯者呼ばわりしながらまたまたそっぽを向くリーリエの安定感。
「しばらくちゅ〜できないかもだからね♪
エネルギーチャージだよ♪
じゃあね」
扉を閉めて二人を後にする。
久しぶりの一人行動だね!
ちょっと、いやかなり寂しい!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます