「吸殻の忘れ物さえ捨てられず 遺骨に炭素は残留しない」という一句に、私はそっと心を奪われました。
吸殻という、まさに生活の残骸のような存在――そこに残る微かな痕跡が、まるで過ぎ去った時間や人のぬくもりを語りかけてくるようで。そして一方、遺骨という静かな終着点には、炭素さえ残らないという無機質な現実。それはまるで「人の証」は本当に残るのかと、問いかけられているようにも感じられました。
触れられない“未練”や“悔い”が、日常の端々にそっと沈み込んでいて。理知と感情が交錯するこの作品の空気感が、読後もじんわりと胸に滲んで、しばらく離れませんでした。静かで、でも確かに生きている言葉たちですね。