10首連作~一蓮托生(いちれんたくしょう)~

大田康湖

10首連作~一蓮托生(いちれんたくしょう)~

焼跡の 大地に芽吹く 若草に 洗濯物の しずくがかかる


闇市で 酒におぼれる若者の 姿に兄の 面影を見る


母も兄も 弟も守れず 残った末の 弟だけが 私の希望のぞみ


あなたなら 待ってくれると 思ってた プロポーズを断った夜


告げられし 別れの言葉に 酒あおり 胃のみる 泣き上戸


亡霊と 呼ばわる伍長ごちょうに 立ち向かう あなたの背中に 吹き出す赤き血


初めての あなたの部屋で むき出しの 傷に寄り添う ひとさし指


翡翠玉ひすいだま 残して母は 父の元 消し炭となりし 三月十日


三つ編みを 解いて結い上げ べに引いて あなたと共に 大人になるの


夏花火 蓮華れんげの下で結ばれて わたしたちは 今生きている

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10首連作~一蓮托生(いちれんたくしょう)~ 大田康湖 @ootayasuko

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