独身酒カスおっさん配信者、TSしてしまう
深空 秋都
プロローグ
4月某日
無職になった。高卒から勤めていた会社が倒産したからだ。
でもちょうどよかったかもしれない。正直なところ、過労気味で心身ともに限界だった。
しばらく働かなくていいと考えた途端、意識がプツリと切れたほどだった。
4月某日
久々の大型連休に心が躍る。
アウトドア派ではないので、やることと言えば元々休日にやっていたライブ配信。好きなオフラインゲームをじっくりとやりつつ、気の合う視聴者と雑談するのが楽しいのである。酒とつまみも合わせれば最高だ。こういうのでいいんだよ、こういうので。
「よっす。晴れて無職になったんで今後ともよろしく」
【ふぁ!?】
【うっそだろお前】
【社畜のお前さんがやめるとも思えんな】
【倒産でもしたんか?】
「正解。勤めてた会社が倒産しますたぁー……はぁ~あ」
【どんまい】
【しゃあないわな】
【ようこそ、無職の世界へ】
普段は強めの言葉を使う視聴者も今回ばかりは同情している。明日は雨でも降るのか。
「というわけで貯金を食いつぶしながらゲーム配信でメンタルリセットしていくぞ!」
5月某日
「Dクエシリーズ完全制覇達成! どんどんぱふぱふ~」
【おめ】
【おつかれさん】
【いや~7作目は強敵でしたね】
【ディスク2枚組は懐かしいが過ぎる】
【9作目リメイクはよ】
「ナンバリング全部面白いとか神シリーズかよ。一生ゲームやっていきたいわ」
日本の国民的王道RPG。さすが外れがない。
過去にプレイしたことがあるナンバリングタイトルもあるが、2回目でもしっかり面白いのは丁寧に仕込まれた小ネタや伏線があるからだろう。子どもの時の大雑把なプレイでは見つけられなかった、あるいは大人になると分かる話もあり、十分過ぎるほど楽しめた。
「次はどのゲームをやろうかな~」
【オールウェイズファイナルなゲームをやろう】
【いやあここは国民的人気ゲームのモンスター育成ゲームだろ】
【いやいやここは黄泉ソウルシリーズを】
【↑鬼畜ゲーじゃねえか!】
「おけおけ、全部順番にやっていこう。時間ならある……ん? ちょっと待って、胸に違和感」
どくんと心臓のあたりがはっきり分かるくらい大きく脈打つ。
「はぁはぁ……うっ!? 息がきつい……ぐぅうう!?」
【おいおい】
【ガチなやつ?】
【あ、これやばい】
【救急か?】
【はよ呼ぶぞ!】
【意識失う前に救急にかけろ!】
意識が朦朧とする中、かろうじて手元に置いていたスマホから3桁の番号を打ち込む。相手が応答した瞬間に住所を最短で告げた。
6月某日
「な、治らないんですか」
「過去に完治した方はいません」
配信中に倒れた日から1か月が経った頃、目が覚めた。最初に感じたのは身体のだるさと空腹感。
「ナースコール押せばいいんだっけ」
勝手の分からない状況に考え込んでいると看護師さんが入室してきた。目覚め、起き上がった俺を見て大きく目を見開くと「すぐに先生を呼んできます」と足早に去っていった。
少しすると想像していたおじいちゃん先生ではなく、爽やかなイケメン先生が現れた。先生はどういう状況なのか、無知な俺にも分かるよう嚙み砕いて説明してくれた。
結論から言うと女体化していた。俺が。
「目の色が琥珀っぽくなってるのも病気の影響なんですか?」
「そうですね。発症した方々の多くが以前とは異なる目の色、体毛になっていますよ」
先生たちがいなくなった後、スマホで検索すると出てくる出てくる。
検索予測に"急性女体化症候群 美少女"とか出てきちゃってる。
「うわすっげー可愛いな」
以前は絶対しなかった自撮りというものをやってみた。撮れたのは銀髪琥珀眼の超絶美少女である。
あまりの可愛さにテンション爆上げしていると看護師の女性がにっこりと見ていた。「かわいいですね、ふふ」と微笑ましいものを見る目だった。超恥ずかしい。顔を真っ赤にして布団で頭を隠した。
6月某日
「やっと退院か~」
非常に珍しい病気だったためか様々な検査や聞き取りをされた。後は政府の支援を受けられるとのことで両親にも手伝ったもらいながら諸々の手続きを済ませた。正直めっちゃ疲れた。二度とやりたくない。
久々の一人暮らし3kルームへ戻ると部屋が綺麗になっていた。どうやら母親が片付けてくれていたらしい。超感謝だ。自撮りでありがとうのポーズを撮って母親に送った。テンション爆上がりしたようでなにより。
ふんふんと昼飯の準備をしていると電話がかかってきた。姉だ。
『あんた服とか男物ばかりじゃないでしょうね?』
「大正解。男物しかねえ!」
『そんなことだと思ったわ。今度付き合ってあげるから買いに行きましょ。旦那と娘も一緒でいい?』
「おけおけ。隆志さんと久々に酒飲みたいオッケーよ」
『いやその見た目だと犯罪臭するから旦那と飲む時は私も同伴するわ』
確かに。
ちなみに隆志さんとは姉の旦那である。
「俺はいつでもいいから日にち決まったらメッセージ送って」
6月某日
姉の着せ替え人形されました。
姪ちゃんだけが癒し。なに? お小遣い? しょうがないなあ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。